ジギタリスの季節2

突然ですが、皆さんの趣味は何ですか?

 

以前に趣味はと尋ねられ「趣味は有毒植物です」とこたえたら、ドン引きされた経験が私にはあります(笑)。

 

前回のジギタリスの続きですが、ジギタリスには「有効域(治療濃度域)が狭い」という薬理学的特徴があります。

 

これは言い換えると、投与量を見誤ると、すぐにでも中毒量になってしまう(中毒域に入ってしまう)から危ないですよ、使うときは注意しようねってことなんです。

 

で、ここで薬全般の話になるんですが、一般的に薬と呼んでいるものは、すべて過剰に用いれば中毒を起こします(その濃度が中毒域)。

 

一方で普段の治療に用いている薬物濃度が有効域(治療濃度域)で、この範囲はある程度幅があるのが多くの薬物なんですよね。

 

あんまり例えはよくありませんが、市販の風邪薬でも大人1回1錠なんて書いてあります。

 

でも、大人にも横綱の稀勢の里から、細すぎ?なんて思っちゃう女優さんまでいるわけで、そんなのひとくくりにして、大丈夫かいな?という心配するヒトも出てくるわけですが、それが有効域(治療濃度域)の範囲の幅があるってことなんですよね。

 

で、話は戻しますが、ジギタリスの場合、この有効域(治療濃度域)が他の薬と比べても大変狭いんで、すぐにジギタリス中毒を起こしちゃうわけです。

 

現在、人類は創薬技術をかなり飛躍させてきて、以前は考えられない想像状の薬も今は創薬できるようになってきました。

 

面白いのは、循環器治療薬の分野で、いまだにジギタリスから得た成分以上に有効な強心剤がほとんどないってことなんですよね。

 

もし、効果があり、有効域(治療濃度域)が広い強心剤があれば、とっくにジギタリスのお世話になっていないわけで、裏を返すといまだにお世話になってるってことは、私たちはまだまだ未熟で、ジギタリスに優る薬をつくれてないってことなんです。

 

やっぱり自然は偉大だなあ、人類はまだまだだなあ、なんて考えさせられちゃいます。

 

最後にどうしても主張しておきたいんで、いいでしょうか。

 

ジギタリスは結局、有毒植物なんですけど、有効域(治療濃度域)で使用してるときは薬草ともいえるわけです。

 

だから「趣味はハーブ(薬草)です」と「趣味は有毒植物です」は同じ意味なんですけど、なぜドン引きされるんでしょうか???