長崎県の対馬にカワウソがいたそうな。
カワウソが野生で対馬にいただけでも、結構ビックリなニュースですが、それがニホンカワウソかもということで大騒ぎになっています(一部だけか?)。
獣医師国家試験でも環境省レッドリスト関連の知識は問われますので、国家試験受験者はもちろん、獣医学生にも注目してほしいニュースです。
ちなみに、絶滅と思われていた動物がみつかったから騒いでいると思っている人が多いでしょうが、実際のところ、ポイントは少し違うと思います。
今回、すごくビックリされているのはカワウソが大型だからです。
通常、小さな花や草、虫などが人目につかず、絶滅したと思われたのに発見されたというケースはあまり驚きに値しません(それでもビッグニュースには違いないんですけどね)。
それは、小さいもの、誰しもが気づかないもの、そういったものは人目につかないところで絶滅していない可能性が常に考えられるからです。
でも今回はカワウソなんです。
そう、ある程度大きな哺乳動物が、人目につかず何十年もなんてことは一般的に考えにくいわけなんですよ。
だから、専門家ほど「まじか⁉」と驚いたわけなんです。
ニホンカワウソかどうかは、今後の調査結果を待つしかないわけですが、ニホンカワウソが絶滅種という知識はこれで国家試験的には出題しにくくなったので、しばらく出題されないかもしれませんね。
最後に、誰も気にしていないかもしれませんが、個人的にものすごく気になったので指摘させてください。
昨晩、テレビのニュースで琉球大学の教授がカワウソ発見の記者会見で「希望としては対馬にずっと残ってきた個体であったらいいと思います」と発言してました。
カワウソ発見以上に、腰を抜かすほど驚いた発言だったので、聞き間違いかとも思いネットで確認しましたが、琉球朝日放送の記事で同様の文章が残されていたので、間違いなさそうです。
科学者、研究者にとって一番まずいのは「個人的な願望、希望」です。
もちろん人間ですから、こうであったらいいな、ああなるといいな、という気持ちは出るでしょう。
でも、それをなるべく排除するのが科学者、研究者なんです。
それが、なんと、個人の希望を報道で発言してしまうんですから、開いた口が塞がりません。
人類の歴史を振り返ってみても、どれだけの科学者や研究者が「思い込み」「個人的な願望」「希望的観測」で判断を間違えてきたことか・・・。
研究結果を冷静に判断せねばならない立場にいる人間が、予断を持つことの恐ろしさをわかっていないことに、心底びっくりしてます。
大学教授でこれなのか、って感想を持ったのは私だけでしょうか?
もちろん大発見だから、興奮していた気持ちもわかりますし、多くの報道陣の前で緊張した気持ちもわかりますが、でも言っちゃいけない一言ってあるんですよ。
どこかの総理大臣や閣僚の発言と同じで、これはダメってラインがあるんですが、今回はまさにそれになると思います。
将来研究職に就きたいと思っている学生、大学職員を目指している学生、そして予断を持たず検査結果を解釈せねばならない臨床獣医を目指す学生には「科学とは、人間の感情をいかに排除できるか」にかかっていることを肝に銘じてほしいと思います。
最後に、ついでですが、国家試験テクニックを一つ紹介しておきましょう。
文脈効果って知ってますか?
例えば「I hove a pen.」とあったら、「I have a pen.」の間違えね、と文脈や前後を意識して文章を解釈してしまうことがあります。
これは日常生活で大変重宝していて、聞き取りにくくても「たぶん、こういっただろう」と思えますし、誤字脱字の文章でも「たぶん、こう書いてあったんだろう」と思え、いちいち確認する手間が省けるわけです。
でも、この文脈効果のせいで、私たちは医療ミスなどを侵してきました。
「いち」と「はち」の数字の聞き間違いなどは典型的なものです。
こうだろう、という思い込み、文脈効果は時に私たちのミスにつながるんです。
国家試験でも、後で自己採点すると「なんでこんな問題を間違えたんだろう」という問題に出くわします。
それ、文脈効果でミスったんです。
問題を解いているときには気づかなかったでしょうが、こうだろうという思い込み、先入観で問題を読んでいたから間違えたんです。
通常、この手のミスは簡単な問題ほど生じやすいので、簡単な問題ほど正しく問題文や選択肢を読み、文脈効果で読み間違いをしないよう気を付けましょう!
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