死亡率と致死率と交絡因子

獣医師ですから、医師に譲るべきかな、と思い、新型コロナウイルス感染症に関してはあまり、ひとりごとを言わないようにしてきました。

 

でも、ちょっと今日は悪意を感じたので、国家試験勉強にもなりますので、言葉の確認をしたいと思います。

 

まず、今回の騒動に限りませんが、死亡率と致死率という言葉の混同が目立ちます。

 

では、クイズ。どっちが正しいでしょうか?(ちなみに数字は嘘で、正確な数値ではありません)。

 

A:日本の新型コロナウイルス感染症の死亡率は1.0%である。

B:日本の新型コロナウイルス感染症の致死率は1.0%である。

 

 

 

 

 

正解は・・・・Bですね。

 

よい子のみなさんは、間違えないと思いますが、新聞、テレビ等で間違った使い方が散見されるようになりました。

 

ネットで検索しても、医師が間違えて使っていたり、目を疑うほどの状態です。

 

獣医師を目指すなら、こういった用語の定義は、疫学の知識になりますが、しっかり勉強しておきましょう。

 

では念のため、確認です。

 

死亡率 = 死亡者数 ÷ (特定疾患を持つ者 + 持たない者)

致死率 = 一定期間内のある疾病による死亡数 ÷ その期間内の同一疾病患者数

 

もしも、新型コロナウイルス感染症の死亡率が1.0%だとすると、国民全員の1%が死亡したことになります。

 

日本の人口が約1億人だとすると、なんと100万人死亡したときの数値です。

 

これは・・・死にすぎですね。

 

そんな、アホな、という突っ込みを毎回したくなるほど、平和だったときはよかったのですが、今は正確なデータが必要な時期ですので、笑って看過はできません。

 

新型コロナウイルス感染症の国内全患者数が分母の数値をみな知りたいわけですし、報道したいはずなんですけど、それが致死率なんですよね。

 

分母の違いに気を付けて、覚えましょう!

 

次は、本日のネットニュースで流れた「新型コロナウイルス感染者の死亡者の7割が男性」という報道についてです。

 

これについて、まじかよと思い、ネットで調べてみると、なんとなんと、菅官房長官自ら発言しているそうで・・・。

 

これには、ちょっと悪意を感じますね。

 

以下は、報道の抜粋です。

 

新型コロナウイルスで国内で亡くなった人の7割以上が男性でした。

 菅官房長官:「国内で感染者全体に占める男性の割合は約6割でありますが、亡くなった方に占める男性の割合は7割強と承知しております」
 ただし、死亡や重症化に至る要因については基礎疾患の有無や年齢など様々な要因が絡むとして「単純に性別が影響しているかどうかは分からない」と述べました。新型コロナウイルスの致死率と性別の関係を巡っては、WHO(世界保健機関)もヨーロッパでの死亡者のうち3分の2が男性だったことを明らかにしています。

 

さて、本日のラストは間違い探しです。

 

何が、間違っているのでしょうか?

 

・・・・答えは「性別が影響していないことを、本当は知っている」ですね。

 

性別と年齢は、疫学の世界では、交絡因子として扱うのが常識です。

 

交絡因子、大丈夫ですか?

 

国家試験出ますよ?

 

疫学苦手な方は、国試研の製本出版で「毒舌で学ぶ疫学」をぜひ購入してください(笑)。

 

交絡因子とは、「観察する曝露と疾病発生の関係に影響を与える第三の因子」を意味します。読んで字のごとく、曝露と疾病発生の関係に「交わって、絡んでくる因子」のことです。

 

例えば、喫煙者と非喫煙者で肺がんの発生について調査すると、非喫煙者に比べて、喫煙者の方が肺がんの発生が数倍高いことがわかります(これは事実です)。

 

これをもとに、禁煙をお勧めしているわけですが、この喫煙と肺がんの因果関係はわかりますよね。

 

喫煙をした→肺がんになった。という原因と結果の関係、つまり因果関係です。

 

でも同じ調査に協力してくれた人で、ライターの所持の有無と、肺がんの発生を調べると、あら不思議。

 

ライターを所持している人は、ライターを所持していない人よりも、数倍肺がんの発生が多いことになります(これも事実です)。

 

ライターを持つ→肺がんになった。という因果関係が成立するわけ・・・・ないだろ!!!

 

このライターを持つというのが、交絡因子ですね。

 

賢明な皆様はわかると思いますが、ライターを持つことと肺がんに因果関係など、ありゃしません。

 

ライターを持っている人のほとんどが喫煙者であるため、こういった誤ったデータ解釈が出てきてしまうわけです。

 

因果関係を調べる疫学を学んだ人なら、常識ですが、年齢と性別は交絡因子として扱うのが一般的です。

 

つまり、年齢と性別は、ライターを持っているのと同じ扱いで、病気との因果関係を疑うのは、ナンセンスなのです。

 

男性に生まれた→新型コロナウイルス感染で死んだ、なわけないだろ!!!

 

性別が影響しているか、わからないではなく、影響していないのは、厚生労働省の役人含めて、知ってるはずなんです。

 

この男性が7割死亡というデータの抜粋には、ほんとうに悪意を感じます。

 

私は、データを持っていないので、推測でしかありませんが、おそらく、喫煙との因果関係の交絡因子が性別だっただけだと思います。

 

つまり、女性より、日本では男性の喫煙率が高い。

 

喫煙している人の方が肺、要するに呼吸器が弱っている。

 

だから、新型コロナウイルス感染症で呼吸器症状が出てしまうと、非常に重篤化しやすい。

 

だから、新型コロナウイルス感染症による死亡と因果関係があるのは、喫煙だと思いますよ(みんな気づいてますけどね)。

 

これまた、推測ですが、男性の方が夜中に出歩いたり、自粛要請を守らないことが多いから、男性に恐怖を受け付けるために、政府がわざと流したデータなんじゃないでしょうか?

 

要するに、確信犯です。

 

最初にニュースを見たときは、エイプリルフールかと勘違いしたほど、目を疑いましたが、私は悪影響を懸念します。

 

この馬鹿な報道をみた、世の女性が、女性だから大丈夫と思って、変な行動に出ませんように・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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コメント: 4
  • #1

    723 (水曜日, 22 4月 2020 01:36)

    分かりやすい説明、ありがとうございます。

    ・「コロナ陽性患者の死亡率」と言う場合は、コロナ陽性患者がコロナウイルス感染症によるものだけでなく、他の事故や病気などにより死亡した数も含める。
    ・「コロナウイルス感染症の致死率」という場合は、他の原因による死亡は含まず、コロナウイルスにより死んだ数のみ。
    と考えて良いのでしょうか?

    疫学は混乱する用語が多いので、宜しくお願いいたします。

  • #2

    管理人 (水曜日, 22 4月 2020 10:05)

    723さん、コメントありがとうございます。質問は国試研「お問い合わせ」からしていただけると助かります。
    致死率の解釈はOKです。
    新型コロナの死亡率をもし算出するのなら、新型コロナ死亡者÷(新型コロナ患者+元気な人)です。他の事故や怪我は含みません。

  • #3

    723 (水曜日, 22 4月 2020 13:01)

    返信ありがとうございます。正しい算出法がよく分かりました。
    次に質問する際は問合せフォームからします。すみませんでした。

  • #4

    Agc (火曜日, 05 5月 2020 23:55)

    交絡因子の存在を指摘できることと、取り上げられた指標と結果の間に真の因果関係がないことはイコールではありませんよ。